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GLOBIS CAPITAL PARTNERS & Co. ベンチャーキャピタリスト 上村康太 のブログ。

「起業は楽しいかね?」

光陰矢の如し、月日が流れるのは本当に本当に早いもので僕が起業して8ヶ月という時が経ちました。とても久しぶりにブログを書いてみようと思います。

僕らは昨年の8月15日に『ソーシャルランチ』という一風変わったサービスを従えてシンクランチ株式会社を2名で創業しました。色々な記事でご紹介頂いているので今更感もありますがデイル・ドーテン氏の名著「仕事は楽しいかね?」をもじって起業の経緯を振り返り、今の心境を書いてみたいと思います。

ソーシャルランチは元々僕とGoogleの同期だった福山の個人プロジェクトでした。福山は学生時代から様々なサービスを個人で開発しており、会社も1社経営していました。2008年にfacebookのプラットフォームがオープン化されてからはfacebookアプリの開発にも取り組み2008年に東京にて開催されたFacebook Developer Garage Tokyoでは開発者として登壇するなど勢力的に活動をしていました。当時の様子はこちらでご覧頂けます→ http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080519/302687/

2009年に僕らは同期としてGoogleに新卒で入社し、僕は広告の営業、彼はエンジニアとしてキャリアを歩んでいました。福山は入社と同時くらいで結婚もしていたので、めちゃくちゃ一緒に遊んでいたとかではないですが、二人共同期の中では新しいwebサービスや未来の事を話すのが好きだったので、ほぼ毎日のように一緒にランチを食べながら「あのサービス面白いよなー」「昨日風呂入りながらこんなサービス思いついたんやけどどう思う?」なんて話をしながら日々を過ごしていました。

そんなある日、いつものように社食で2人でランチを食べているときに、福山から「俺今度ソーシャルランチってサービスだそうと思ってるんだ」って聞かされました。聞いた時の印象は「へー、社外の人とランチを食べるんやね。よく分からんけどなんか面白そうやな」という感想でした。

そうして、ソーシャルランチは2011年5月9日にサラリーマンとして働きながらの福山の個人プロジェクトして世の公開されました。未だに鮮明に覚えていますが、前日の5月8日の深夜に福山から「今から出すわー」と簡素なメールがきたのを覚えています。日曜の夜23:30頃であったかと思います。まあせっかくだし応援するか、と「友達がこんなサービスを出しましたー!」とtwitterでつぶやきました。

当時200人くらいしかフォロワーがいなかったのですがそのtweetがどんどんRTされ、「ソーシャルランチ...だと!」という想像以上の反響を得たことを覚えています。そして、ローンチ当日5/9に実際に4件ほどランチが成立しました。実はその内の1組に僕も参加していました。

これまで経験したことのない "自分のサービス(正確にはこの時にはまだ福山個人のものであり僕は関係していませんでしたが)" が、知られる、そして実際利用されるということを目の当たりにし、強い衝撃と興奮を覚えました。5/8の夜はひたすらtwitterクライアントの更新をし続けて一睡もすることが出来ませんでした。

その興奮を押さえることが出来ず、福山になんでも良いから手伝わせてくれないか、と話をして、公式のtwitterfacebookアカウントの運用あたりから僕が協力をし始めました。この当時は別にこのサービスで世界をとれる!とか起業するぜ!と思っていたわけではありませんでした。ただ純粋に "なんか面白そう" と思いそれに関わりたいと思いました。

そこからは、仕事が終わった後に二人で集まり、サービスをこう改良しようとか、もっとユーザーを増やすためにはこんなことをしよう、なんてディスカッションをする毎日が始まりました。とにかく本当に楽しかった。

サービスを進めていく中で、趣味のプロジェクトとして進めるにしても何らかの目標が必要だと感じ、その時たまたまtwitter上で見つけたStartup Datingという団体が主催しているイベントでピッチ(プレゼン)を行うこととしました。当時の様子は動画として残っています。



Startup Dating Vol.9 (Jun 2011): Pitches 

 
ご覧頂いて分かるように、ランチのマッチングという根本は変わらないものの、当時は今とは異なる仕組みを提供していました。
ピッチの前のパネルでは、nanapiのけんすうさん、iQONの金山さん、KAUPONの村田さんが登壇されており、ピッチの審査員には、家入一真さんがいらっしゃり、

 

「なんだかとんでもないところに踏み込んでしまったな」

 

という思いを抱いたことを覚えています。奇しくもその時のパネルのテーマは「ウェブ大手出身CEOのスタートアップ方法」でした。 

今思えばこのイベントに参加したことが僕らの人生を変えた一つのきっかけになったのかもしれません。初めて人の前で自分たちのサービスをピッチしたのですが、この時の会場の評価は「イマイチ」でした。とても悔しかった。

イベントの後、恐らく入社してから初めて二人で品川の居酒屋で酒を飲みました。
それまで一度もお互い「起業」という話をしたことはありませんでしたが、
その時初めて、

 

「さて、これからどうするよ」

 

という話をしました。

それまで1ヶ月程サービスを運用している中で、二人の中では「このサービスには "何か" ある」と感じるようになりました。それはきっとその当時僕ら二人にしかない感覚でした。ただ、その "何か" を実現するためにはこのままのクオリティやスピードではいけない。ちゃんとやるなら(会社を)出る、出ないなら(サービスを)閉じる、それしかないという思いへと変わって行きました。 

その夜、僕らの中で "ちゃんとやる" ことが決定しました。

僕みたいな人間がこのブログで自伝ごっこをやるつもりはないので、この後のことを詳細に書くつもりはないですが、これが僕らが起業に至った経緯です。

僕らは前職に誇りを持って表向きにも公表しているため、「どうして辞めたの?」「怖くなかった?」「勿体無いと思わなかった?」と聞かれることがよくあります。

向こう見ずなやつだなんて思われたくないし、かと言って「昔から起業すると心に決めていました」なんて嘘を言う訳にいかない。なので「もっと面白いものを見つけてしまいました」とお話していますが、これは真の思いです。

確かにGoogleでの生活は最高でした。世界的ブランドのもとで普通の新卒でまず担当させてもらえないものをどんどん取り組むチャンスがあり、海外との繋がりもあり、給料も良いし、社食も美味い。

もちろん、いっぱしにサラリーマンらしく同僚との酒の席では「うちの会社わねー」なんて愚痴をいうこともありましたが、3年目の分際でそんな感情抱くのは自分のわがままだと認識していました。

ではどうして起業なんて一般的には思い切った行動に出たのでしょうか?

僕は起業後すぐ初めてブログ記事を書きましたが、そこにも書いたように、極めて自然にその選択肢を選んでいる自分がいたのでそれに従うことにしました。

いつか自分のサービスを持ちたいと思っていたこと、そして自分のサービスを持つという刺激的な経験をしてしまったこと、そして、それをやっていく上でこの上ないパートナーがその場にいたこと。色々なことが重なり、この決断をしたのではないかと考えています。


ただ、ここまで書いておいて何ですが、起業した当時は「起業したぞ!」威勢を張った自分もいましたが、なぜ起業に至ったかなんてことはどうでも良いことだと最近思うようになりました。

今は本当に大事なのは、起業しようが、転職しようが、今の組織に属しながらでも、自分がこうしたい、こうありたいという自分に近づくためにその時最適な選択肢を選ぶということだと思っています。

お分かりの通り、当たり前のことを書いています。

僕にとっては、その最適な選択肢が起業だった。
それだけのことだと分かるようになりました。 

さて、そんなこんなでソーシャルランチというサービスと共に8ヶ月を歩んで来たわけですが、これまでの人生ではあり得ないような経験をし続けながらここまできました。想像を上回り、相当量のメディアで取り上げられたことで、

「活躍見てるよー」
「すごいねー」
「楽しそうだねー」

と、知り合いから声をかけて貰いますが、 その度感じている感情は、純粋な "ありがとう" となんとも言葉に表し難い "つらい" が入り混じったものです。

今の現状では僕らのサービスは "ただ少しウケただけ" です。何も凄くない。
本音をいうと初めのころはメディアに出られることに心躍らせていました。そんな経験、それまでの生活ではあり得なかったからです。

僕らは恵まれた環境を捨てて今このチャレンジに挑んでいます。ただサービスが注目されるだけでは、趣味のためになけなしの貯金と時間を投入したのとなんら変わりはありません。 

目指さなければならないのは、より多くの人の人生に影響を与えるような価値あるサービスにソーシャルランチを育てることです。自分のサービスに惚れてそれが実現する "何か" が見てみたくて、 "ちゃんとやる" ことを選んだわけですから、このサービスが "何か" を実現出来るまでは足を止めてはいけません。

人は人生で常に正しい選択肢を選ぶことは出来ませんが 、選んだからには選んだものを正しいものに変えるのは誰でもなく自分自身です。 

僕らは昨年の10月19日に、このサービスをリリースし、少しずつユーザーを増やし、着実にランチを成立させてきました。
僕らのサービスを通じてランチが成立するということは、僕らの作ったサービスが誰かの生活に変化を与えているということです。ここにはとても大きな価値があり、こだわらなければならない点だと考えています。

そして、自らの足を止めないために今日3月22日にソーシャルランチはサービスの刷新を行いました。対応地域を全国47都道府県に拡大し、複数ペア制の導入、UI/UXの再設計をしました。これはサービス開始当初から叶えたいと思っていた夢であり、様々な仕様変更によってこれを成し遂げました。
今回のリニューアルにより、僕らは次のフェーズに突入したことを宣言します。

これからどうして行きたいかは僕らの中にありますが、
これからどうなって行くのかは誰にも分かりません。

分からないからこそ、恐怖があり、
分からないからこそ、興奮があります。

起業とは、そんな恐怖と興奮の間で突き進むことを意味するんじゃないかと思います。
僕はもう一度同じ選択が出来たとしてもこの世界に身をおくことを選んだと思っています。


起業は楽しいです。

 

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