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GLOBIS CAPITAL PARTNERS & Co. ベンチャーキャピタリスト 上村康太 のブログ。

僕が資金調達をして知った事とスタートアップのこれから

はじめに

 

我々ソーシャルランチを運営するシンクランチ株式会社はこの度、約3,200万円の資金調達を行いました。昨年8月に起業し、10月にサービスイン、そしてこのタイミングでこれから攻めの姿勢で闘い続けるための資金を得られたことを嬉しく思います。

 

リリース:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000004237.html

 

このブログポストはこれから資金調達を行う起業家に向けたものです。実際投資の現場のプロの方にとっては「違うぞ小僧」という点は多々あるかと思いますが、投資を受けた側として感じたことをそのまま書くことに意味があると判断してこれを記します。

 

このブログポストを書く理由

 

今年に入って西田さんがTechCrunchに『起業家に告ぐ、TechCrunchにだまされるな』( http://jp.techcrunch.com/archives/jp20120106dont-blindly-accept-techcrunch/ )という記事をポストしました。この記事は安易な「面白いサービスを作ればお金は後からついてくる」「どこかが買収してくれるはず」という考えに対する警告であり、起業家へのエールであると僕は認識しています。記事の最後の方に

 

2012年は昨年シードアクセラレーターが生み出したスタートアップたちが正念場を迎える。それが後続の人たちに繋がるようになってほしいと思っている。そして、このまま起業ブーム(いやブームにすらまだなってないのかもしれないけれど)がもっともっと盛り上がってほしいと思っている。

 

とあるように、これまで長年スタートアップを追い続け、それを愛している西田さんだからこそ、スタートアップが多く生まれたことを歓迎しながらも、これが一過性のブームに終わることを危惧し、しっかり収益を意識した計画やビジネスの重要性を発信したのではないかと僕は一読者として感じました。

 

ただ、一方でこの起業家へのエールに対して、「初めからお金を生み出すサービスでないと価値がない」「最近の起業家は皆お遊びだ」という論調がこの記事を発端に今年に入って目立ち始め、スタートアップ達の "攻めの姿勢" を萎縮させ、逆に「安易なマネタイズ」への誤った方向転換をきらせる世の中の流れになることは、新しいビジネスモデルの創出を妨げ、そこそこ受けるサービスの量産になるため好ましくないと思っています。

 

僕は先日facebookにこんなポストをしました。

 

お金は後からついてくる。それは、ターゲットが絞れていて、ターゲットの生活に寄り沿い、持続可能な仕組みが構築されていることが前提です。そう僕らは考えています。戦略的な無料と、希望的観測の無料は全く別のものであるという認識と、どれだけマネタイズの可能性を模索できるか。"なんとなく"ではなく、こうなったらこう出来て、こうなったらこう出来る、とプランを用意し、それぞれの場合において試算を打つ。良く考えたら当たり前のことですよね。だって僕らはビジネスをしているんですから。語弊を恐れず言います。2012年、僕らは儲けます。

 

ここで書いたように、全てのサービスが初めから収益を上げることが出来る訳ではありません。収益の上げ方に頭を捻り、然るべきタイミングで投下する、正しいタイミングで投下するためにそれまでの成長のエンジンとなる資金を第三者から調達する、というスタイルの成功事例は日本でももっと増えて良いと考えています。

 

僕らは「そのサービスどうマネタイズするの?」と良く聞かれますが、そんなあまりに重要なことは言えるはずがありません。でも「言えません」なんていうと「こいつオレを信頼していないのか」となるので、「色々考えてます」と答えています。お察しの通り、その後に僕らに向けられる眼は、完全に見下されたものです。

 

スタートアップは、世の中にまだない新しいプロダクトを投入し、そこから収益を上げることを目的とするため、極めて斬新なアイディアとスピードを持って一気に攻めなければなりません。先ほどの "戦略的な無料" が意味するところとは、簡単に「これは儲かる」と分かるとすぐに資金力のある大企業が参入してきて、情勢を一瞬でひっくり返されることになるため、闘うための資金を得て、サービス改良に注力し、収益化のモデルをテストしながら、勝機を狙う、というスタートアップのスタイルはあって然るべきなのではないでしょうか。ただ、もちろんこのスタイルは相当なリスクを伴うということの理解と覚悟が必要なのは確かです。

 

このブログポストを書くことに正直僕自身にメリットはありませんが、昨年爆発的に生まれたスタートアップの多くが、近いうちに直面する問題であり、それに対して国内で実際に行われた資金調達の生の情報が著しく欠如しているため、実体験によって自分が得た経験値を "シェア" することで、多くのスタートアップが次のステージに進み、共に新しいWEBの世界を創り出してゆければと考えています。

 

資金調達をして知った7つの事

 

さて、前置きが長くなりましたが、本題に入ります。

 

これまで僕らは、創業者2名の社会人時代に貯めた給料から捻出した資本金でサービス運営を行なってきました。そのため、数百万程度の少額投資を受ける必要はなく、今回が初ラウンドでした。

 

最近では投資意欲が高い、シードアクセラレーターや個人投資家が増え、少額投資には比較的資金調達しやすい、恵まれた環境であると言われていますが、必要な知識や、サポーターを得られないと、せっかく得たピッチのチャンスを無駄にしたり、いざ投資を受けられるように話が進んだ際に投資契約の中身を十分に理解せず、「まあこんなものか」と結んでしまうことで、後々「話が違う」「条件が悪すぎた」となる可能性があります。

 

資金調達は「おカネちょうだい」「おう、いいよ!」というものではありません。そこで、あくまで1つのサンプルではありますが、今回の自分の体験記と感想を記しておきたいと思います。

 

 

資金調達をして知った事】

1.国内の大手VCは「日本企業」である。

2.個人投資家からの調達には時に慎重でなければならない。

3.投資家プレゼンは徹底的に磨き上げる。

4.事業計画書(財務計画)は5年先まで。

5.バリエーションの判断材料は「過去事例」。

6.投資契約書は佶屈聱牙

7.プロのサポートは不可欠。

 

 

1.国内の大手VCは「日本企業」である。

 

まず、個人投資家や少人数でファンドを運用しているシードアクセラレーターの投資とは異なり、大企業のVCや事業会社には、日本の大企業的な社内の稟議というものがあるため、決裁権者が最終的に縦に首を振らない限り投資を勝ち取ることは出来ません。そのため、社内で決裁権者である上司に自分たちに投資すべき理由を説明し、説得を行なってくれるVCや事業会社の担当者の方にきちんと思いを伝え「この起業家に投資しよう」と強く思って頂かなければなりません。

 

後の項目でも書いていることですが、投資家プレゼン極限まで分かりやすくしなければなりません。その理由は、初めにプレゼンを聞く担当者に共感して貰うため、だけでなく、その担当者がその上司である決裁権者に説明を行う時にも共感を生み出すようでなければなりません。

 

担当者から決裁権者への階層が多ければ多いほどそのスピードは遅くなり、大企業であるほど、プロセスを進める上でのルールや提供を求められる情報が多いことを改めて知りました。

大企業からの投資を受けようとする場合は、その覚悟が必要です。

 

また、「日本企業」であると書いた意味はもう一つあります。

 

海外から入ってくる投資にまつわる話は「VCを信じてはいけない」といったようなVCを敵対する内容が目立つように思います。ただ、それは相当な数と量の投資がなされており、スタートアップの競争も熾烈で、VCもシビアな交渉を求めてくるため、それに対応するためのHOW TOが溢れ、その一部が海を渡って日本にやってきているのではないかと思います。日本のVCが朗らかで優しいという意味ではありませんが、常識を逸れたアンフェアな交渉をふっかけてくる可能性は低く、一定の知識と加えて専門家のサポートがあれば海外の投資事例を読み漁る必要はないのではないかと思います。

 

2.個人投資家からの調達には時に慎重でなければならない。

 

個人投資家(エンジェル)から投資を受けることのメリットは多大にあります。

 

それは、個人投資家の多くは事業の成功者であり、その方がアドバイザーとしてついて頂くことで、様々なアドバイスを得られたり、広い人的ネットワークを利用することも可能です。また、一般的に個人投資家からの投資は「彼を気に入った」で行われることが多いため、投資検討から実行が極めて簡単なプロセスで行われることが多いです。そんな魅力がありながら、僕達が今回個人投資家からの投資を受けなかった理由は、リスクマネジメントの観点からです。

 

参照:反社会的勢力との係わりと株式公開


企業はいかなる場合であっても反社会的勢力と関わりを持つことを許されないということを弁護士の方から改めて説明を受けました。

 

芸能界に王者の如く君臨していた紳助さんが一瞬で追放されたように、もしも株主のどなたかが過去現在未来で反社会的勢力と関わりを持った瞬間、如何なる形式のExitの夢も消えて無くなります。

 

ただし、今回僕達は「見極める力」が自分たちにはまだ不足していると考えたためこのような判断を行いましたが、近年のスタートアップ界の盛り上がりは間違いなく個人投資家の方々の存在によって支えられており、これからもPay it Forwardのエコシステムが日本においても熟成されてゆくことを大変期待しています。

 

3.投資家プレゼンは徹底的に磨き上げる。

 

資金調達の準備に行うことは、事業計画書の作成です。

事業計画書には、2種類のタイプが必要で、

 

事業計画書(プレゼンテーション)

事業計画書(財務計画)

 

「投資家プレゼン」とはその名の通り、投資家に行う事業計画のプレゼン資料です。プレゼンテーションによって投資家の賛同を得ない限り、何も始まりません。

 

プレゼンの構成は、もちろん何を伝えたいか、伝えなければならないかによりますが、僕は下記のように構成しました。

  1. 創立者紹介
  2. 事業ビジョン
  3. 解決したい問題
  4. 事業コンセプト
  5. 想定するユーザーの利用シーン
  6. サービス内容①
  7. サービス内容②
  8. テスト版の過去実績
  9. 市場浸透の可能性①(内部要因)
  10. 市場浸透の可能性②(外部要因)
  11. 競争優位性
  12. リスクへの対処
  13. ビジネスモデル
  14. マイルストーンと売上予測
  15. 資本政策
  16. メッセージ
  17. エグゼクティブサマリー

まず最初に、大事なことは、

 

どんな人間がどんな思いでサービスを作っているのかを伝え、

投資家にサービスの利用シーンを想像できるようにする。

 

だと知りました。VCのキャピタリストは非常に多くの玉石混交のベンチャーのプレゼンを聞かなければなりません。そのため、判断は冒頭の数分間で行われます。冒頭の数分間で「なるほど、面白い」と共感を得られなければその先の話が聞かれることはありません。

 

ただ、これはプレゼンのテクニックを説明したいのではなく、ビジョン、解決したい問題、コンセプトがないサービスなんてあり得ませんが(存在はしますが)、どれだけそれを完結に、短く、分かりやすく説明出来るかは、どんな場面でもサービスを説明する上で重要だと強く感じた為です。

 

例えば、僕らのビジョンは

 

『新しい昼の文化を創る』

 

ですが、もともとは「毎日のランチを価値ある時間に変える」でした。

長い、価値ある時間とは何なのか、などとボヤケていたため極限まで削り、今のものに辿り着きました。

 

そして、プレゼンの最後には毎回こんなメッセージをつけました。

 

人生を豊かにするのは、

人と人の繋がりであるという信念を持ち、

新しい昼の文化を創ります。

 

もちろん投資は複合的要素で判断されますが、「思い」は根底にあり、人の判断は往々にしてその「思い」に動かされます。これは僕らの思いの強さをきちんと伝える為にきちんとスライドにして説明しました。

 

4.事業計画書(財務計画)は5年先まで。

 

続いて、財務計画に関してですが、必要な項目は保有している資産や予定するビジネスモデルや資本政策によって異なりますが、僕は下記のように構成しました。

  1. PL(損益計算書)
  2. BS(貸借対照表
  3. CF(キャッシュフロー計算書)
  4. 月次試算表
  5. 前提条件
  6. 売上計画(1年分は月次)
  7. 営業費用明細(1年分は月次)
  8. 人員計画
  9. 売上債権計算
  10. その他BS項目
  11. 資本政策
  12. 固定資産明細
  13. 当初コスト
  14. 資金繰り表(月次)

このような構成で、【将来5年間】の計画を作成しました。

僕らはこれをまだサービスがスタートする前に作成した為、雲を掴むような作業でしたが、大事なことは "納得感" のある数字に落としこみ、"思考の深さを示す" ことだと知りました。

 

テクニックとして財務計画を作成する上で、大事な事は「前提条件」の項目を設けて会員数などの変動しうるパラメータを全て一箇所にまとめることです。もし、会員数の推移が計画通りにならなかった場合は連動して売上予測などはどう変化するのか、などいつでもテスト出来るようにしていないといけません。ある方は前提条件がない事業計画書は鼻から見ないとおっしゃっていました。

 

5.バリエーションの判断材料は過去事例。

 

よく資金調達といえば「バリュエーション、バリュエーション」という話が出ますが、創業間もないスタートアップの企業価値を算定することは非常に困難です。今回知って驚いたことは、シード段階での企業価値の算定は主に「過去事例」によって決まるということでした。過去に行われた同じような投資案件で定められたバリュエーションがある場合、「前例がある」ということで話が進みやすくなります。

 

また、例えば、目立った収益を上げていない企業でも一定の期間企業活動が行われているということ自体で企業価値が高くなるということも驚いたことでした。逆に言うと、今回の我々のような創業3ヶ月程度で収益を上げておらず新しいビジネスモデルの創出を目指すスタートアップが自分たちの希望するバリュエーションをつけることは相当な努力がいるということです。そして、収益を上げる構造が分かりやすいほど企業のバリュエーションが上がり易いということも事実です。

 

6.投資契約書は佶屈聱牙

 

プレゼンが済み、「前向きに進めましょう」となると、NDA(機密保持契約)を締結し、必要資料の提出が完了すれば、投資契約書の交渉が待ち構えています。

 

投資契約書で、投資実行後の「経営者が保有する権利」「投資家が得る権利」が決まります。

 

投資契約書は、素人が見ると佶屈聱牙な呪文のようなものです。所謂一般的な「契約書」とはレベルを違うものです。あまりの難解さに、パッと見ではこんなもんなのかな、となりますが、ここで結ぶ内容はそう簡単に変更が出来ないものであり、このタイミングで投資家とは交渉を行わなければなりません。

 

幾度と無く「マークアップ」と呼ばれるwordの「変更履歴」を用いたやり取りを繰り返し、双方合意にたどり着きます。

 

まず、そもそも投資契約書に記載されている内容がどういう意味なのか、その条件だと将来的にどういうメリット、デメリットがあるのか、などは弁護士の方に説明を頂かないと到底分かり得ないものだと感じました。

 

また、そこに記載されている内容が一般的で妥当なものなのか、少し条件として厳しめのものなのかも経験豊富な弁護士やファイナンスのプロの方にしか分かり得ないのではないかと思いました。

 

複数社が同時に投資を行う場合、基本的に投資契約書はリードと呼ばれる最も多い金額を出す企業と締結されるものをベースとして行われます。期限を区切り、その中で最善の内容になるよう努力をしなければなりません。そのため、契約書のレビューと交渉方法の指南を頂く弁護士の方の力量によって大きく結果は変わってくるのではないかと思います。

 

7.プロのサポートは不可欠。

 

今回の資金調達を行うにあたり、社長にサービス開発に集中して貰うために全ての作業は僕が担当しました。参考になる情報として周りの方に薦めて頂いた磯崎さんの「起業のファイナンス」は非常に為になりました。ただ、実際書いてあることを納得して「確かに」と読むことが出来たのはこのラウンドを終えて改めて読み返した時でした。

 

僕らが資金調達を行うにあたり、多くのプロフェッショナルの方のサポートを得ることが出来ました。

 

本ラウンドにおけるプロジェクトチームは、

・ど素人の僕

資金調達を企業・VC両方の立場で関わってきた方

公認会計士

・弁護士

というチーム編成でした。

 

このようなチームを組めたことは幸運でしたが、納得の行く資金調達のためには経験豊富な方のアドバイス、そして士業の方のサポートは必要不可欠であると強く感じました。

 

さいごに

 

海外での調達は限りなく難しい現状では、海外の事例より国内の生のアドバイスほど価値のあるものはないというのが得られた結論です。またその上で、資金調達の経験がない経営者が増資を行う場合、そのプロセスをサポートしてくれるプロの存在が絶対に必要です。「資金調達のためにすべきこと」のセミナーに足しげく通う時間を、そういったサポートを頂ける信頼できる専門家の方を探す時間に充てて頂くことをおすすめします。

 

当たり前のことですが、資金調達はゴールではなくスタートです。今の時点で未来の我々を評価し、投資を行なって下さった3社、日本ベンチャーキャピタル株式会社(京大ベンチャーファンド)、KDDI株式会社、株式会社経営共創基盤に感謝し、その期待に応え、営利企業として互いが利益を得られるようにしなければなりません。

 

多くのスタートアップにとって今年が勝負の年となると思います。

 

成功する企業はいつの時代も一握りです。

それを分かっていながら勝負に出るのがスタートアップです。

 

世間は僕らを無謀、世間知らずと否定します。

それだって分かっていながら勝負に出るのがスタートアップです。

 

今のスタートアップを取り巻く恵まれた環境は、先人である過去の無謀な起業家が築き上げたものです。

そして、今は多くが不安定で無価値に見えますが、次なる世代は確実に出来かかっています。

 

共に闘いましょう。

 

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